全国で3年に一度地域をあげて現代アートを楽しむ美術イベントを行う「トリエンナーレ」が盛んに行われるようになりました。そんなトリエンナーレの最大規模のイベントが「ヨコハマトリエンナーレ」です。
子どもにとってヨコハマトリエンナーレでのアート体験とは?
2017年のヨコハマトリエンナーレの子ども向け解説イベントに参加してみると、そこは親子で楽しく美術を楽しめるテーマパークのようでした。
また、中学受験を目指す子どもたちにとっては難民問題や環境問題について子どもたちが素直に考えられるような問いかけをしたものも多く時事作文などを書くときの貴重な体験になるとも感じました。
さらに中学生以下は無料というのも嬉しいポイントです。注目の作品や見どころ、おすすめの準備方法や混雑具合などについてご紹介します。
ヨコハマトリエンナーレの見どころガイド
シロクマの気持ちで地球を感じよう! パオラ・ピヴィ作品
「ミラノに産まれたこの作家さんは、アラスカに住むようになって、シロクマの気持ちがわかるようになっちゃったんだって。この3匹のクマさんたちはそれぞれ題名がついているんだけれど、どれがどれか当てられるかな?」
「当てる、当てる!」という子どもたち。
「準備ができたら教えて」
「私の大好きなジジ」
「I and I (芸術のために立ち上がらなければ)」
もちろん全部、きちんと当たっていましたが、「シロクマさんたちは今、大変な状況にあるんだけど、どんな風に大変なのかも考えてみてね」というような声かけもありました。
科学好きな子どもがワクワクしそう! マーク・スティアーニ作品
合わせ鏡の手法を使い、「どこかに繋がっているようでどこにも繋がらない<<トンネル>>」や「はしごの添えられた底のない<<穴>>」が続いているような作品世界を作り出しているマーク・スティアーニ。
どこまでも続いているように見えるのに、実際にはその部屋の後ろに別の部屋があることを見た後にこの作品を見た子どもたちはびっくり。「何で?」「鏡でしょう?」「鏡だったら見てる僕達が写るはずじゃない」 「合わせ鏡は縁起が悪い」という迷信を子どものころに聞かされた大人たちは何ともいえない薄気味悪さを感じるかも知れませんが、子どもたちは「自由工作で作って見ようかな。万華鏡のような感じかな」との声も。いろいろな感じ方ができる不思議な作品です。
入り口から見る人を圧倒するアイ・ウエイウエイの2作品
入り口で誰もが驚くのはヨーロッパに拠点を移して活動する中国人アーティスト アイ・ウエイウエイさんの2つの作品です。 まず目を奪われるのが、入り口の柱をライフジャケットが覆う「安全な通行」。難民として地中海を渡ったシリア人たちが実際に使ったライフジャケットと実際と同種のゴムボートが美術館の入り口に展示されています。 一緒に回った家族たちはライフジャケットの「YAMAHA」の文字に目を止め、さすが世界のYAMAHAだとの反応が最初多くみられました。
その後にこのライフジャケットが実際に使われたものだということを聞き、「どこに行くかもわからないまま海の上をゴムボートで漂う間、このライフジャケットは難民たちのいろいろな声や自然の音を聞いていると思うのです」という解説を聞くと、声も出せないような沈黙が少しつづきました。 何人かの親子が「子どものライフジャケットはないのですね」「一瞬、当事者になったような気持ちになりました。そういう時間をくれるのがアートなんですね」という感想を口にしているのが印象的でした。
続いておよそ3000匹の蟹が群れる「河の蟹(協調)」。1億30000万人と世界1人口の多い国に群れている人々の様子を景徳鎮の磁器で作った蟹で表現した作品。
子どもたちにとっては身近な「カニ」という存在がこれほどの数群れているという見慣れないシーンに強い印象を受けたようで口々に「わー」「なんだ~」「何匹いるんだー」と思わず口にしていました。
「ヨコハマトリエンナーレガイドブック2017」には「いずれの作品も、権力構造と大衆との関係を示唆している」とありますが、そのような難しい表現でなくても、子どもたちの胸に迫る力のある作品です。
混じり合う文化の迫力を感じる ジョコ・アヴィアント作品
続いてエントランスホールを占拠するように置かれた竹の巨大な作品です。「この作品は作家が日本のあるものを見たことから作られましたが、何でしょう?」 「しめ縄」と子どもたちはもちろん元気に答えます。
これは、日本と同じく竹を日用品に多く使うインドネシアの作家ジョコ・アヴィアントが5人のチームで2000本もの竹を2週間ほどもかけて組み上げてしめ縄から着想した「雲」。それも仏教やヒンドゥー教の世界観の中心をなす「須弥山」にかかる雲だとか。
中を通れる仕掛けも子どもたちのワクワク心を誘い、通りながら力強く曲げられた竹を間近で見ることもできます。
トレーダーからアーティストへ! 日常の視点を持つ重要性を感じる川久保ジョイ作品
トレド(スペイン)に生まれロンドン(イギリス)で活躍する川久保ジョイ。美術館の白い壁面を削って作られたギザギザした模様のような作品。よく見ると下には年号らしき数字が、左横には数の大きな数字が書かれています。
左横の数字の近くの壁には、「Please feel free to touch this wall. このかべは ぜひ さわってください」との文字が。
「まず触ってみましょう。触るときもそっと、違いを感じながら触ってみましょうか」と言われ触ってみると「冷たいー」「ツルツルのところと、ザラザラのところがある」と子どもたち。
「美術館の壁は展覧会のときに塗り直すことがよくあります。横浜美術館の壁も何度も何度も塗り直されているわけですが、この作品の深く削られている部分は29年前の美術館の壁です。元トレーダーである川久保ジョイさんは、みなとみらいエリアの土地の価格の過去と未来を美術館の壁を削って触れって感じる作品を作るという方法で表現したんですね」との解説が。
この作品と向かい合うように設置された小さな小部屋にドアが付いた作品は福島の地にうめられた感光紙を見ることができるものもあり、日常と社会、メッセージが一体となった川久保ジョイさんらしい作品です。
子どもと行くときにチェック! 事前準備しておくともっと楽しめるポイント
1.カメラを持っていこう!
多くの作品は撮影が可能です。子ども用のカメラなどがあるとさらに子ども目線の撮影をすることができ、ヨコハマトリエンナーレを子どもが自分自身の経験として楽しむことができます。
2.子ども用ガイドを持っていこう!
横浜市内の学校では「ヨコトリ2017をもっと楽しむ!鑑賞ポケットガイド」が配布されています。こちらをもっていくとスタンプラリーや解説を楽しむことができます。
会場で配布もされているので会場で手に入れることもできます。
3.たくさん歩ける靴で行こう!
横浜美術館を中心に3カ所の会場で行われているヨコハマトリエンナーレ。メイン会場の横浜美術館だけをみるのでも、かなりの距離を移動します。
歩きやすい靴や服装がおすすめです。
4.アプリをダウンロードしてイヤフォンを持っていこう!
ヨコハマトリエンナーレ専用のアプリをダウンロードしておくと、作品解説を自分のスマートフォンで聞くことができます。
イヤフォンも忘れずにもっていくのがおすすめです。
5.着替えとビーチサンダル、タオルを持っていこう!
ヨコハマトリエンナーレのメイン会場である横浜美術館とマーキイズの間にはポップジェットの水遊び場のあるグランモール公園があります。
子ども連れで出かけた場合には、ここで遊ばないではいられないというぐらい子どもたちをひきつける場所。是非、ぬれても大丈夫な着替えとビーチサンダル、タオルを持っていて思いっきり遊ばせちゃいましょう!
全国の子どもとアートを楽しめる美術館!
アンデルセン公園こども美術館(千葉県)
日本の人気テーマパーク第3位にもなった「アンデルセン公園」内の美術館。
ワークショップ室、版画、食、染、織、陶芸、木、アンデルセンスタジオの8つのアトリエで特色ある創作体験ができる他、年4回の企画展も子どもが楽しめる内容となっています。 〒274-0054 千葉県船橋市金堀町525番 アンデルセン公園こども美術館(千葉県)
浜田市世界こども美術館(島根県)
1996年子どもがアートに親しめる美術館を目指して設立。企画展も子どもたちが先入観なく楽しくいつのまにかアートと触れ合えるものばかりです。
また、1日かけてアートの鑑賞そ創作を行うワークショップも数多く開催されています。
〒697-0016島根県浜田市野原町859-1
♯ヨコハマトリエンナーレ ♯ヨコトリ