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2017年6月10日「ママモコモセミナー ~取り残される日本の教育 未来を育む子供達が身に着けるべきチカラ~」をテーマに教育評論家、臨床教育研究所「虹」所長、法政大学特任教授でもある尾木直樹先生の講演会が開催されました。

多文化共生時代に「生き抜く力」を伸ばす「新しい学力」とは?

東京大学の「アジア大学ランキング」首位陥落が日本の置かれている状況を如実に表している尾木直樹さん。自身の5歳、3歳、1歳半のお孫さんもインターナショナルスクールに通っていると言います。

孫たちがインターナショナルスクールで英語と日本語のバイリンガルとして育つのを間近で見ていて尾木さんが最も強く感じるのは、英語がしゃべれるか? しゃべれないか?ということよりも、孫たちが日本の教育ではあまり重視されてこなかった重要なものを身に着けていると感じていると言います。

「それは、自分の考えを明確に伝える思考力と意思と、表現力です。このことを考えるために大事なのは、『言葉が人格形成』に影響を与えていること。英語特有の「私は + 動詞」の文法が子どもたちの思考に大きな影響を与えているのを強く感じています。

インターナショナルスクールの子どもたちは、1歳でも2歳でも、あなたの名前は何ですか?を常に問われ、小さな子どもでも毎日『私が大好きな本についてしゃべります~』といった、40秒程度のプレゼンテーションを毎日行っています。

一方で日本の同年齢の子どもたちが通う幼稚園や小学校で行われるのは、集団行動をいかにとれるようになるかという点に重点を置いた教育がです。

この教育方針の違いが、10年、20年するうちに、英語ができない日本人を英語ができる人たちが跳ね飛ばし、阻害するようになるのではないかと危惧しています」

大学が変わらなければ終わりだ! 大学から、高校、中学、小学校を変えていく!

日本の教育の弱点が何で、日本の教育をどう変えていく必要があるのかについて日本政府も手をこまねいているわけではありません。2020年の教育改革の中に、日本の教育を変えるんだ! という強い意志を感じています。

数年前に東京大学や法政大学で秋入学を取り入れることが議論されましたが結局実現はしませんでしたが、これは大きな失敗で、日本の大学は海外から遅れをとる理由になりました。

「そのような反省もいかし、戦後7回目の教育改革にあたる2020年の改革では、これまでの小・中・高校を対象にした改革からいよいよ大学をターゲットにし、大学入試を大きく変えていきます。

これまで 学力とは? 知識
これから 学力とは? 思考力・判断力・表現力

センター試験をやめ、記述式を入れます。多文化の中で共生していく力、命令されるのではなく主体的に交流していく力を養成することを重視し、思考力、判断力、表現力をとう問題が出題されます」

子どもたちの未来のために親ができることは?

子どもたちを育てるパパやママに是非取り組んで欲しいことは、どんどん明らかになっている科学的データを知ることや、子どもの自己決定を尊重しながら子どもの心を伸ばしていうことだと尾木先生は言います。

1 脳の研究データを知り子育てに生かす

近年、脳科学が非常に発達し、アメリカやヨーロッパでは脳科学を教育に応用する国家プロジェクトが行われています。この研究でわかってきたのは、「ピアノ」が非常に地頭を鍛えるのに有効なこと。

フラッシュカードなどは脳の部分を鍛えますが、ピアノは「脳のコントロールセンター」を鍛えます。

「パパやママには、部分ではなく、脳のコントロールセンターをどのように鍛えるかについての情報収集をおこたらないようにしてほしいと思います」(尾木先生)

2 男の子の脳と女の子の脳の仕組みが違うことを知る

男の子と女の子の脳が大きく違うということも近年の脳科学の発達でわかってきたこです。例えば愛情を伝えるホルモンである「オキシトシン」は、女の子の方が分泌されやすく、親が優しく頭をなでてあげるだけでも女の子は分泌されやすくなります。

一方で男の子は10分抱きしめてあげないと分泌されないと言います。しかもそれが50分程度しか続きません。こういったデータを親のほうでも知っておくことで子育てに役立てることができます。

3 自己決定を通じた達成感を感じさせる

また、子どもの「自己決定」を尊重しながら導くことが非常に重要だといいます。

「例えば雨の降る日に子どもが新しい高価な靴を履いてでかけたいと言ったとします。その時に頭ごなしに、『ダメ!』というのは簡単ですが、『今日は〇〇に出かけて、雨がふると新しい靴が汚れてしまうけれど、どうするかは自分で決めなさい』と言ってみます。

それでも子どもがその靴を履いて出かけて新しい靴がドロドロになったとしてもそれはその子の自己責任であり子どもは納得します。しかし、履きたくない靴を履いて出かけたこどもは、その靴を履いて出かけて嫌だったことを帰宅すると起こりだすというようなことが起こります。

子どもというのは、何かを強制をされてうまくいかないと自分のせいではなく、親のせいだ、人のせいだと思ってしまいがちなのです」(尾木先生)

親の方は心配をして先に「ダメ」というのではなく、失敗しそうなことはあらかじめ伝えておいて子どもの自己決定を待つのがいいですね。

そして、自己決定をして失敗したときには『どうしたの?』と聞いてあげましょう。そうすると子どもは弁解をはじめますが、弁解するのは辛いからです。

そこでパパやママにしてほしいのは、『大変だったね』『辛かったね』とう共感です。共感することで子どもの中に親への信頼と、自己決定をおこなった自信が育ち、子どもの意欲の原動力となります」

価値観や評価基準が大きく変わるこれからの時代、親のほうも情報収集や子どもへの関わり方の検討などが求められる時代であるともいえます。

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尾木直樹
教育評論家
臨床教育研究所「虹」所長
法政大学特任教授

滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校、東京都公立中学校教師として、22年間子どもを主役とした創造的な教育を展開、その後大学教員に転身して22年、合計44年間教壇に立つ。

「キレる子現象専門家会議」(東京都)委員、「放送分野における青少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会」(郵政省)委員、など歴任。主宰する臨床教育研究所「虹」では、所長として現場に密着した調査・研究や、教育に関する執筆、評論活動を行っている。

多数の情報・バラエティ・教養番組やCMにも出演しており、「尾木ママ」の愛称で幼児からお年寄りにまで親しまれ、全国各地への講演活動にも精力的に取り組んでいる。