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「あのこは貴族」は、富山出身で大阪の大学へ進みライターとなった後上京、『ここは退屈迎えに来て』をはじめ故郷富山をモデルとした地方都市の閉塞感をテーマとした作品が多い山内マリコさんの作品です。

門脇麦、水原希子をメインキャストに岨手由貴子が監督を務める映画が公開されたことで注目を集めたことで書籍を手に取りました。

書籍を手に取るきっかけとなったのはYOUTUBEの「そえまつ映画館」のレビューで2021年の日本映画最優秀作の一つだと言われていたこと。それ以外にも同様のレビューを多く目にしたためです。

「あの子は貴族」あらすじと感想

東京生まれの箱入り娘・華子は結婚を焦ってお見合いを重ね、ついに申し分のない条件の青木幸一郎に出逢います。

一方地方生まれの美紀はもう勉強の末に慶應大学に入るも父の仕事がうまくいかず中退。ラウンジ勤務中に幸一郎に出逢い恋人関係に。

しかし幸一郎は結婚相手に華子を選びますが、華子と美紀がひょんなことから出逢い、、、。

慶應内部生の幸一郎と外部生の美紀との同じところにいながら同じ世界を生きていない断然した立場。自立しないエスカレーター式の女子校で育ち松濤の実家で暮らす華子の描写が中高一貫校育ちの人には見慣れた風景が描かれています。

「そえまつ映画館」では東京というごく狭い世界が描かれていることに「怖かった」という表現も使われていましたが、この怖さというかグロテスクさはもっと強く描けただろうなと思いながら読むので、今ひとつ没入感はもちませんでした。

それでも、読んでいると人生の節目の結婚式で自分もグロテスクなものに囚われた経験が蘇ってきて読みながら首を振ってついてくるものを振り払うような気持ちになりました。

学校を特定できそうな学校描写に中高一貫生になったばかりの長女は自分を惹きつけて読んでいるようでした。

華子の友人や美紀が自立した女性である理由がもう少し丁寧に描かれていたら、娘には対比がもっと明確に伝わったかもしれません。

私は娘には自立した女性として生きて欲しいけれど、彼女が選ぶのがもしかしたら華子や幸一郎のような「守る人生」かもしれません。

どちらを選ぶにせよ、これからの中高一貫校での6年間の経験が大きく人生観に寄与するのだろうと、見守る方も心配で身震いするようなタイミングで読むにはよい本でした。